なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか―PKO司令官の手記

まず初めに言っておきますと、本書は虐殺の描写に関してはかなり淡々としています。虐殺の結果として散乱した死体や傷ついた人々を目撃したりはしますが、あくまで「事後」の光景であり、虐殺実行者や生存者の生々しい体験談を読みたいのであれば他の本を読むことをオススメします。他の方のレビューで親の前で子の腕を切る描写などが引用されていますが、これも本書の中では他の文献からの引用という形で挙げられており、筆者自身の言葉でそういった描写が出てくる箇所は稀です。では、本書は何が主題なのか。それはまさに邦題の通り「なぜ救えなかったのか」という所です。無力な国連、自国の犠牲をためらう先進国、非協力的な紛争当事者。こういった諸々の中で筆者が心身をすり減らしつつ延々と実を結ばない努力をする話がメインなので、読みづらい翻訳も相まって読むのは本当に疲れました。しかし、なぜ国連のメカニズムがうまく働かなかったかということに関しては嫌というほどよくわかるので、将来国連で働くことやこういった国際貢献という分野に関心がある方にとってはこの上なく参考になると思います。繰り返しになりますが、ルワンダ虐殺の悲惨なエピソード群など"ドラマチック"な話を期待して読み始めると絶対に挫折する羽目になると思いますのでご注意を。