トロイラスとクレシダ―シェイクスピア全集〈23〉 (ちくま文庫)

トロイラスとクレシダ読み出しの印象は相思相愛の二人がギリシャ側とトロイ側の政略によって引き離される悲恋なのかのと思いきや、ギリシャの英雄アキレスと大アイアスそれにホメロスのイリアスでもかなりのひねくれ者でオデッセウスからさんざんに殴られるテルシテスとのドツキ漫才が展開されるどたばた劇へと変容するのである。あれほどつらい別れに苦しんだクレシダが敵将であるギリシャ側のデオメデスといちゃついているのをやきもきしながらオデッセウスに自制を促されながら眺めるトロイラス、かなり笑える構図です。松岡和子氏の和訳は原文の韻を踏んだ文章を和訳でも再現されていらっしゃるし、訳注も原文を丁寧に取り上げながらきめ細かな注釈を付けてくださるのでとても参考になります。訳文も生き生きとして面白く読めます。その他のシェークスピア作品もお勧めです。