反音楽史―さらば、ベートーヴェン (新潮文庫)

音楽評論は当てにならないと教えてくれているのでしょう。演奏家はさておき、音楽評論家の語学は予想以上にひどいもので、誤訳のオンパレードです。音楽に浮かれてなのか、肝腎の語学はそっちのけ状態です。この書（単行本）でも、73ページに「性病がヴェネツィア病 (Venetian Disease)という名がついた」とありますが、これはあくまでもしゃれで、本来はVenereal Disease (ヴィーナス病) 、性愛の神のヴィーナス由来の病気ということです。91ページのペルゴレージの姓の由来も、Pergola＋Iesiなどではなく、ペルゴーラの住民がPergolesi（複数形、単数形はPergolese）だからです。ちなみにパリ16区にあるペルゴレージ街はこの作曲家に由来するもので、"rue Pergole`se"と綴ります。こういうヨタ話は特に音楽の話題に多い気がします。キリギリスやその関係者がまき散らすヨタ話を、我々アリ共が是正していかなければ、後世にデタラメな話だけが伝わることでしょう。この著者はキリギリスじゃないかもしれませんが。