まったくゼロからの論理学

既に多数の論理学の著作がある著者。今回はどんな内容だろうと楽しみにしていたが、予想外と言うか、論理学の中でもごくごく基本的な事項を扱ったものを出してきた。本書は、二部構成となっており、第１部は日常の言葉を用いて、推論や演繹、連言と選言、ド・モルガンの法則、対偶論法、推移律、全称命題・存在命題・単称命題といった事項について解説する。第２部は、記号を導入して、命題論理と述語論理について解説していく。こちらは第１部を意識した内容になっており、記号ばかりで何を言っているのか直ぐに見失うということはないような工夫が施されている。途中途中に練習問題が挟まれており、それを解きながら読み進んでいくと理解は深まる。ただ残念なのは、練習問題の解答は巻末に掲載されているものの、その解説が必ずしも十分ではないこと。なかには練習問題の解法について本文中で触れられることもあり、そうであるなら、全ての練習問題についてもう少し詳しく解説するということがあっても良かったと思う。また、本書の最後のところで、不完全性定理に少しだけ言及して終わる。この不完全性定理が扱われる部分は「公理系」と題する章だが、この部分の駆け足感が半端ない。最後に一気に難易度を上げてしまい、それが結果として読者を置き去りにすることになり、読後感は良くない。